~介護現場でAIが「イマイチ」扱いされる、その背景にあるものとは~

「AIなんて、現場じゃ使えないよ」
そんな声を、私はこれまで何度となく耳にしてきました。
「言葉が固い」「介護の気持ちまでは分からない」「かえって手間がかかる」
現場で働く仲間のこうした声を聞くたびに、正直なところ私自身も「確かに」と頷いてきました。
でも、ある日ふと思ったのです。
“本当に使えないのか?”
たとえば、看護師やケアマネが何か新しい道具を使い始めるとき。
最初は誰だって戸惑います。
「今までのやり方の方が安心」「壊れたらどうするの?」「覚えるのが面倒」
でもそれは、その道具の“使い方”をまだよく知らないからではないでしょうか?
AIも、実はそれと同じなのかもしれません。
多くの介護現場では、日々の業務に追われています。
記録、申し送り、家族対応、ケアプランの更新、委員会の資料づくり、研修の準備…。
一方で、AIはといえば──
「一言入力すれば、何でもやってくれる魔法のツール」
そんな誤解や期待を持たれがちです。
けれど実際のAIは、“補助者”のような存在です。
たとえば文章作成においても、
・何を書くか
・誰に向けて書くか
・どんな雰囲気で伝えたいのか
こうした情報があるからこそ、AIは力を発揮します。
逆にいえば、「目的があいまい」なまま使うと、たしかに“使えない”と感じるのです。
AIが得意なこと、不得意なことがあります。
たとえば…
- 【得意なこと】
・文章のたたき台づくり
・多忙な職員の思考整理の支援
・資料の構成案出しや要約
・複数文書の統一感の調整
・多言語対応やフォーマット変換 - 【苦手なこと】
・細かな文脈の理解(例:「Aさんはいつもより機嫌がいい」など、背景を知らないと難しい)
・人間関係の機微に基づく配慮
・その施設“らしさ”の表現(初期段階では難しい)
この“得意/不得意”を知らないまま、
「なんか使いにくい」「全然現場向きじゃない」
と判断してしまうことが、現場にAIが浸透しない最大の理由の一つです。
そしてもう一つ、見逃せないのが**“心理的ハードル”**です。
「自分はアナログ人間だから」
「パソコン苦手で…」
「若い人がやればいいと思う」
そう思っているうちは、たとえ優れたツールが手元にあっても、“使える状態”にはなりません。
ここで大切なのは、「完璧に使いこなす」ことではなく、「一緒に育てていく」気持ちです。
「AIが勝手にやってくれる」のではなく、
「私の仕事を少しだけ助けてくれる“相棒”」くらいの距離感でいいのです。
先日、ある先輩職員がこう話していました。
「最初は“使えない”と思ったけど、やってみたら“意外と悪くないな”って思えた。
自分の言葉で直す前提で使えば、下書きとしては十分役立つよ。」
まさにその通りだと感じました。
たとえばAIに「電気代値上げのお知らせ文をつくって」と依頼すれば、30秒で案を出してくれます。
それを見て、「この表現は少し冷たいかな?」「ここはうちの施設名を入れよう」と編集していけばいい。
これまで1時間かかっていた仕事が、15分で終わる。
その差は、想像以上に大きいのです。
私たちは、AIを「評価する前に体験する」必要があります。
最初から完璧に使える必要はありません。
むしろ、「どう使えば仕事がラクになるのか?」を考える過程こそ、現場の力になります。
そして、その経験を仲間とシェアすることで、
「AI=使えないもの」という固定観念は少しずつ崩れていくでしょう。
【結び】
「AIは使えない」と感じるのは、
決してあなたの責任でも、時代に遅れているわけでもありません。
それは、「まだ知る機会がなかった」だけです。
ほんの少し、触れてみる。
ほんの少し、使ってみる。
その一歩が、介護現場の“働きやすさ”を未来につなぐ、大きな扉になるかもしれません。