医療と介護の「すき間」をつなぐ、新しい風のものがたり
病院を退院したその日から、患者さんは「療養者」や「利用者」と名前を変え、まるで川の向こう岸へ渡るかのように医療の世界を離れていきます。
けれど本当は、川の上下流のように医療と介護はつながっていなければならない——その思いから生まれたのがメディカルケアプランナーという取り組みです。

■ 生みの親は慢性期医療の旗手・橋本康子博士
日本慢性期医療協会の会長を務め、急性期から慢性期、在宅・介護までを見通す**「シームレスなリハビリテーション」を提唱してきた橋本康子医学博士は、医療と介護の“つなぎ目”をなくすためにケアマネジャーを支える専門家**の必要性を訴えてきました。そこで誕生したのが、医療的知識を携えつつケアマネと並走するメディカルケアプランナーという役割です。
■ どんな人がなるの?
メディカルケアプランナーは医師でも看護師でもありません。
しかし、疾患の経過や薬剤情報、リハビリ計画を読み解く医療リテラシーと、介護保険制度や地域資源を俯瞰するケアマネジメント能力の両方を磨いた“二刀流”の専門職です。
ケアマネジャーが抱えやすい困難——
- 「医師の指示が専門的すぎて訳せない」
- 「リハビリ職と生活支援職の意見が食い違う」
- 「医療用語を家族へやさしく説明する時間が足りない」
——そんな場面で、メディカルケアプランナーが通訳・調整役として入り、計画づくりと現場を同時に支えます。
■ 何が変わる? 三つの効きめ
- ケアプランの質向上
医学的エビデンスと生活視点を併せ持つため、「急性期治療の続き」と「在宅での暮らし」を切れ目なく接続できます。 - チーム連携のブースター
医師・PT・OT・ST・介護職・家族——多職種がバラバラに語る「想い」を一つの図面にまとめ、情報の迷子をなくします。 - ケアマネの“燃え尽き”予防
アセスメント、書類、会議調整に追われるケアマネジャーの事務負担を軽減し、利用者との対話にエネルギーを回せるようにします。
■ AIと握手をすると、もっと遠くへ行ける
橋本博士はICT・AI活用にも前向きです。たとえば、
- AIが前回の診療情報・バイタル・生活歴を要約→プランナーがリスクと目標を肉付け
- 音声入力でヒアリング内容を自動文字化→プランナーがニュアンスを補正して共有
- 生成AIがリハビリ動画教材を多言語で作成→外国籍スタッフや家族へわかりやすく説明
こうした仕組みが普及すれば、「医療×介護×AI×プランナー」の四重奏で、地域まるごとのケア品質を底上げできます。
■ 「まだ制度がないから」は、足かせではなく羅針盤
現状、メディカルケアプランナーは国家資格でも介護報酬区分でもありません。
けれど、制度が先にあって人が動くのではなく、人が走り出したあとに制度が追いつく——それが医療介護改革の常。
橋本博士は学会や政策提言の場で「基準介護・基準リハビリ」の制度化を呼びかけ、専門家が適切に評価される仕組みづくりを進めています。
■ 誰の未来のため?
最終ゴールはただ一つ。
**「病気になっても、住み慣れた地域で安心して暮らせる社会」**です。
メディカルケアプランナーは、その未来へ続く“橋”。
AIは橋を照らす“灯り”。
そして、渡るのは利用者さんと家族。
私たち現場のスタッフは、その旅を支える“船頭”です。
おわりに
もしあなたの施設で、ケアマネジャーが書類の山に埋もれていたら、
もし多職種カンファレンスが“言葉の迷路”になっていたら、
メディカルケアプランナーという新しい仲間を迎え入れてみませんか?
そしてその傍らには、静かに大量の情報を整理し、必要なときにそっと示してくれるAIの存在を——。
「人と人が向き合う時間」を取り戻す鍵は、橋をかける勇気と灯りをともす想像力にあるのです。