~電気代値上げのご家族通知文から見える、AIと現場職員の“たたかい”~

「すみません、○○さんのご家族に、電気代値上げのお知らせをお送りしたいんですが、文案を見てもらえますか?」
そんな声を聞くのは、ちょうど利用者さんのトイレ介助が終わってホッと一息ついた夕方の時間帯。
「えっ、また文案?」
ふと頭の中をよぎるのは、過去に何度も作ってきたお知らせ文。内容は似ているはずなのに、そのたびにゼロから考えたり、他施設の事例を検索したり、上司に確認を取ったりと、意外と時間がかかるものです。
たとえば今回のお知らせ。
「電気代の値上げによる負担増について、利用者様ご家族への理解を求める文書を作成する」。
この一文だけ見ると簡単に思えますが、実際にはこうしたことを考えながら作成していきます。
- 値上げ額の具体的数値(どれくらい上がるのか)
- 施設としての姿勢(やむを得ない事情があること)
- ご家族への丁寧なお願い(負担をかけることへの謝罪)
- 他のサービス費やケア内容に影響しないことの説明
- そして、心が通った言葉づかい
「たった1枚の文章」に、こうした配慮を詰め込む作業は、実はとても神経を使います。
書いては消し、言い回しを変え、所長や他職種の目も通して、ようやく完成。
気がつけば…1時間近くが過ぎていることも。
そんなとき、「AIを使ってみませんか?」と提案されたのはつい最近のこと。
最初は正直、半信半疑でした。
「人の気持ちを大事にする通知文を、AIなんかに書けるのか?」
「きっと定型文のような、冷たい文になるんじゃないか?」
ところが実際に使ってみると、驚くほどスムーズでした。
AIは、過去の通知文の雰囲気や、こちらが伝えたい内容を入力すると、30秒ほどで「たたき台の文章」を出してくれるのです。
それは、もちろん完璧ではありません。
でも、ゼロから作る必要がなくなるだけで、気持ちはぐんと楽になります。
あとは職員の言葉に調整すればいい。
全体の作業時間は15分ほどで済みました。
この違いは「たった45分の差」に見えるかもしれません。
ですが、現場ではこの45分が、食事介助の遅れになり、
記録入力の残業につながり、
ときには職員の「もう辞めたいな…」という小さな気持ちのきっかけになることもあります。
時間は、利用者さんと向き合う「心の余裕」にもなります。
ケアの質を支える「職員同士の声かけ」の時間にもなります。
ひとり職員が10分短縮できれば、10人で100分のゆとりが生まれます。
AIは魔法の道具ではありません。
けれど、「あれ?意外と使えるかも」という小さな気づきが、
現場の働き方を少しずつ変えてくれるのを、今、私たちは感じ始めています。
電気代のお知らせ文。
この小さな出来事が、AIと現場が手を取り合う最初の一歩になるかもしれません。
【結び】
「あなたの言葉でまとめてください」
AIは、そう言ってくれているように思います。
現場の経験と、AIのスピード。
どちらか一方ではなく、両方を活かせば、
私たちはもっと利用者さんの「今」に向き合える。
そんな未来が、すぐそこに来ています。